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Final Fantasy IX〜Another Side〜
〜第6章〜

レオンは教会の奥にある大きなドアにたどり着いた。

背中に背負った大剣を

ありったけの力を込めてドアにぶつける。

何回か斬りつけたら、ガシャンという音がした。

衝撃で鍵が壊れたのだろう。

体当たりしてドアを開ける。


すると、そこには・・・。

見上げるほどのステンドグラスが

中央の両端にあるホールだった。

日の光りではなく、さっきから

この空間を支配するこの青白い光のせいで、

巨大ステンドグラスは不気味に輝いていた。

その二つのステンドグラスの中央には祭壇があって・・・。


「ミオ!」


そこにはミオが横たわっている。

ミオの周りには、黒い影が漂っていた。


(なんだ・・・?4匹いるか・・・。)


黒い影は一つに集まっては離れ、

また一つに集まっては離れを繰り返していた。


(・・・人か?)


確かに人に見えるが・・・。

と、その影は一つに集まり完全な人の形となった。

その男の周りには完全に一つに

成り切れなかった黒い靄が漂っていた。

顔はぼやけてしまっているが

鎧を着て大剣を背負っている。

その男はレオンに気付きこちらを振り向いた。

レオンは剣を構え直した。

相手も剣を構えていたからである。


(くそっ!なんなんだよ!)


相手がどうであれ、

ミオを助け出さなければ話にならない。

レオンは剣を下に構え、その男に正面から斬りかかった。

男はレオンの剣を受け止めた。

剣と剣がぶつかり合う音が響き渡った。


(こいつ!実体なのか!?)


明らかに本物の剣の感触が手に返ってくる。


「いったいぜんたい、なんなんだよ!」


レオンはその男に向けて叫ぶ。


「・・・。」


なにも答えない。

もう一度斬りかかる。

今度はなぎ払うように横一文字に斬りかかった。

しかし、その男は剣を垂直に構え

レオンの剣をまたもや受け止めた。

剣をギリギリと擦り合わせるような音が鳴っている。

押し負けた方がやられる、そんな状況になっていた。

レオンは男のことを見る。

相変わらず顔はよく見えない。

見えないというよりは、見ようとすればするだけ

見えなくなる、そんな感じだ。


「ミオをどうする気だ!!」


すると、男が何かを叫んだ。


「えっ・・・」


レオンは男が発した言葉の本当の意味が

このときはわからなかった。

聞き覚えがある声だ。

しかし、それが誰の声だかは思い出せなかった。

しかし、うまく聞き取れなかったが

その男は確かに"ミオ"と言ったのだ。

どうして・・・。

相手の剣の力が緩んだ。

その瞬間をレオンは逃さなかった。

迷っている暇はない。

剣を押し込むと相手の体勢が崩れた。

そして、袈裟懸けに斬りつける。

血の代わりにその男の切り口から

黒い靄が吹き出していた。

その男は叫びを上げるでもなく、崩れ落ちた。

男を実体化させていた黒い靄は空中にとけていった。



ミオの傍まで駆け寄り腕で抱き抱える。

大丈夫、気を失っているだけみたいだ。

その時、左右のステンドグラスが

凄まじい勢いで砕け散った。

あまりの衝撃にレオンは身をすくめる。

その中から、巨大な竜が姿を現した。

いや、違う。

竜に見えるが、体中が腐敗している。

ドラゴンゾンビ・・・。

人づてに聞いたことがあった。

しかし、こんなに巨大なものなのだろうか。

人から聞いたドラゴンゾンビと、

目の前にいる奴は明らかに違う気がする。

体中に黒い斑点が付いていた。

その斑点はまるで生きているかのように

大きくなったり小さくなったりしている。

ドラゴンゾンビと目が会う。


「ほう・・・また愚かな人間どもが気よったわい。

わしの眠りを邪魔しおって・・・」


(こいつ、口がきけるのか!)


レオンは驚きとともに警戒の度合いを高めた。

ミオを抱き抱える腕に思わず力が入る。


「おまえは・・・」


「名乗る必要など無いな、小僧・・・」


「・・・!!」


「今から死ぬ愚か者に名乗る必要など無いということだ!」


「なにを・・・」


「闇の目覚めを待っておったのに、邪魔しおって。」


ミオを抱えたままでは剣を引き抜くことが出来ない。

なんとかして距離を取らなくては・・・。

ドラゴンゾンビがレオン向けて突進してきた。


「くっ!」


横に飛びギリギリのところでかわす。

ドラゴンゾンビからいったん離れる。

ドラゴンゾンビも無理に飛び込んでくるような

真似はしないようだ。

充分距離を取った所でミオを壁に寄り掛からせる。

まだ気を失ったままだ。


「ミオ・・・」


奥歯をギリッと噛み締める。 「おまえがミオをさらったのか?」


ドラゴンゾンビに向けてゆっくりと歩き出す。


「私ではない。彼女は必然とここに運び込まれてきたわけ

だ・・・」


ドラゴンゾンビがレオンを見下ろしていう。


「どういうことだ?」


背中から大剣をゆっくりと引き抜く。


「小僧。先ほど戦った相手が誰だかわからんのか?」


「なに?」


戦った相手とは黒い靄のことだろうか。


「わかるわけないだろ・・・」


正面に剣を構える。


「それがわからんようでは、

おぬしには誰も護ることができんな。

愚かな人間よ、哀れな人間よ。

その小さな手で何が護れるというのだ?」


ドラゴンゾンビの鋭い眼光がレオンを捉らえる。

しかし、レオンは歩みを止めない。

ゆっくりと確実に距離を詰めていく。


「あの小娘はそこまで大切か?

護り抜く力も持たんでよく言ったものだ」


「・・・。」


「残念だな・・・おぬしには何も護れん。

ここで、哀れに死んで逝くおぬしにはな!」


ドラゴンゾンビが咆哮を上げた。

たじろぐことなくレオンは静かに剣を

ドラゴンゾンビに向ける。


「死なねぇよ・・・

俺がなぁ・・・」


「俺が護るって約束したからな!!!」


レオンはドラゴンゾンビに斬りかかった。


「うぉぉぉ!!」


ドラゴンゾンビは斬りかかりにきたレオンを

前足で弾き飛ばす。

吹き飛ぶレオン。

崩れ落ちた岩にぶつかり止まる。

岩には衝撃で亀裂が入っていた。

気を失いそうになるがなんとか持ちこたえた。


(正面から斬りかかるのは無理か・・・。ならばっ!)


レオンは息を整えると回り込むように駆け出した。

ドラゴンゾンビはレオンの動きに

釣られてレオンを目で追った。

その時、ドラゴンゾンビの視界から突然レオンが消えた。

レオンが体を前に転がし、

ドラゴンゾンビの懐に飛び込んだのだ!

完全にドラゴンゾンビの死角に入った。

目の前にあったドラゴンゾンビの足に

勢いに体重を乗せ、大剣を振り降ろす。

ドラゴンゾンビの腐敗した皮膚が斜めに裂ける。

血は噴きでなかった。

変わりに、この世のものとは思えないような

色をした液体が傷口から噴きだしていた。


「グゥオオォォー」


突然の反撃に驚き、ドラゴンゾンビが暴れ始めた。

今の一撃が効いたのだろう。

ドラゴンゾンビの目からは理性が完全に消えていた。

体中の斑点がボコボコと泡立ち始める。


(くそっ・・・)


予想以上の力に完全に圧されてしまう。

こうなってしまっては、どうしようもならないと感じた。

それは、勘のようなものだった。

そもそも一人でどうにかなるレベルではないのは

わかっている。わかっているのだけれども・・・。

尻尾がレオン目掛けて振り降ろされた。

レオンは頭上で剣を構え受け止めようとしたが

勢いに負けて吹き飛んでしまった。

剣を支えていた腕が折れてしまったのがわかった。

吹き飛ばされ壁に激突し、レオンの体が悲鳴を上げた。

口から鮮血を吐き出してしまう。

ぐったりともたれかかる。

目の前にドラゴンゾンビが迫ってくる。

目の前がぼやけてきた。


(ミオ・・・俺、約束守れないかも・・・) その時、ドラゴンゾンビの首元に見覚えのある

槍が突き刺さった。

意識がもうろうとする中、それが誰のものかわかった。


「レオン!」


ゼノとスーラが駆け込んでくる。

「グォウァァァー」



ドラゴンゾンビが身をよじり悲鳴をあげた。

ゼノが高々と飛び上がり
頭を下げたドラゴンゾンビの頭部に飛び乗り槍を引き抜いた。


「スーラっ!」

「あいよっ!」


スーラは腰に差した短刀を
ドラゴンゾンビの顔目掛けて投げつけた。

しかし、ドラゴンゾンビは頭をひねり

飛んできた短刀をかわした。

ドラゴンゾンビが頭を上げると同時に

ゼノは槍を地面に突き刺し、

それを踏み台にして飛び上がった。

ドラゴンゾンビが頭を上げるのと

ゼノが飛び上がったのがドンピシャリの

タイミングだった。

完全に頭を上げたドラゴンゾンビの目の前に

ゼノが飛んでくる。

ゼノは体を体にひねりを加え、
ドラゴンゾンビの顔面に強烈な回し蹴りを叩き込む。

ドラゴンゾンビの骨がミシッと嫌な音を立てた。

苦痛にもがき苦しむドラゴンゾンビ。


すると、聞き覚えのある声がホールに響き渡った。


「ケアルラ!!」


レオンの体が癒しの風に包まれる。

体中の細胞が急速に再生していく。

体中にあった傷が再生速度を急激に速めていった。

痛みが消えていくのがわかる。


「レオン!」


ミオだ。意識を取り戻したようだ。

顔をあげようとしたレオンの視界に

痛みに苦しむドラゴンゾンビが入った。





血の気が引く。






全てがスローモーションに見える。




その巨大な尻尾がミオのことを弾き飛ばしたのも。


ドスッ!!

鈍い音が響く。


「ミオ!!!」


吹き飛ばされ壁に激突しぐったりとしているミオ。







その時、レオンの中で何かが砕けた。

それは鎖のようなものにも感じたし、

何か自分を縛っていたものが外れたような感じだ。

体中の細胞が異常なほど活動を始めた。

レオンの体からはまばゆい光りと電流が放たれ始めた。

そして、レオンの体が凄まじい閃光に包まれる。


「なっ・・・!?」


スーラが声を上げた。

レオンから放たれた電流の影響で周辺に

あった小岩などが電気を帯びながら宙に浮いている。

バチバチと音を立てて、小さな放電が繰り返されている。



「レオン・・・!お前、まさかトランスを!」


ゼノが驚愕しながら言う。

レオンにも体中が熱くなるのがわかった。

こんな状態になっても意識はあった。

レオンの髪の毛は金色に変わり、鎧は光り輝き、

レオンの持つ大剣には、

まるで龍が巻きついているかのように

光りの束が絡み付いていた。

レオンの体から発っせられるエネルギーが

大剣に集まり始めた。

ゆっくりと剣を構え直す。

スーラがミオを抱き抱えているのが見えた。

若干ではあるが回復用のアイテムは持っていると

言ったので今のところはミオのことは

スーラさんに任せておこう。
視線をドラゴンゾンビに戻す。

正面に構えた剣を挟んでドラゴンゾンビが見える。

レオンはゆっくりと目を閉じる。

全神経を剣先に集中させる。


ドラゴンゾンビが憤怒の表情を浮かべていた。

まさか、自分がこんな小僧に痛め付けられるとは

思っていなかった。

ゆっくりと近づいて来るレオンのことを睨みつける。

この小僧だけは生かしてはおけない。

ドラゴンゾンビは地を揺るがすような咆哮を

上げるとレオンに向かって突進した。

レオンはカッと目を見開くと突進してくる

ドラゴンゾンビをスレスレでかわし、

すれ違いざまに足を斬りつけた。

痛みに声を上げ、停止するドラゴンゾンビ。

勢いのあまり盛大な砂ぼこりがあがった。

斬りつけた傷口からはレオンの大剣に

まとわりついていた光りが残っていた。

"光り"

ドラゴンゾンビが唯一忌み嫌うものであった。

存在を許してはいけないものであった。


(この小僧は光りと共に消え去ってしまえ!)


ドラゴンゾンビはもう一度レオンに向かって突進した。

と、目の前にいたはずのレオンが消えていた。


(!?)


ドラゴンゾンビの視界にレオンが突然入った。

ドラゴンゾンビの顔よりも高く飛び上がっていたのだ。

空中を飛び上がったレオンと、見上げるドラゴンゾンビ。

目が合う。


レオンの大剣の剣先に光りが集まり、

それは球状になっていた。

レオンはまばゆい光りを放っている大剣を

空中でドラゴンゾンビに向けて振り降ろす。

レオンの大剣から放たれた光りのエネルギーは

無数の光りの筋となり
ドラゴンゾンビをあらゆる方向から貫いた。

ドラゴンゾンビの体が聖なる光に包まれる。


「グゥゥオオオオーー!!!!」


成すすべなくドラゴンゾンビは地に崩れ落ちた。

地に崩れ落ちたドラゴンゾンビの体が

光りとともに空中に溶け出していった。



・・・もう蘇ることもないだろう。



勝利を確信したレオンの体から光りが消えていった。

飛び上がっていたレオンはそのまま地上に落下していく。


天井が見える。


「ミオ・・・。俺、約束守れたかな・・・」


落ちていく体と意識の中でレオンが考えたのは

あの約束のことだった。

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